内科救急指定病院 医療法人 足利中央病院 栃木県足利市

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紫外線とシミ

No.19 2009年 6月

紫外線が強くなる季節になりました。紫外線は可視光線よりも波長が短い光線で、電磁波の一種です。目には見えません。日常私達が見ることができる光は可視光線といって、これも電磁波です。赤色は波長が約700nm(ナノメートル;百万分の一ミリ、この場合0.7マイクロメートル)で、それよりも波長が長い光線を赤外線といいます。赤外線は体内に浸透して吸収され、暖める効果があります。紫外線(ウルトラ・バイオレット:UV)は波長が400nmよりも短い電磁波で、皮膚にある程度長い時間あたればヤケドに相当するサン・バーン(紅斑)を引き起こします。皮膚が赤くなって、場合によっては水ぶくれができます。好ましくない状態です。数日すると、黒い日焼けサンタン(皮膚に色素沈着)になります。生物だけでなく、各種物質に化学変化を引き起こします。紫外線を消毒に使うのは殺菌力があるからです。もっと強い影響力を持つのがX線、ガンマ線など、さらに波長が短い電磁波で、放射線と呼ばれます。放射線に過度に露出(曝露)すれば生命にかかわる障害を受けます。

紫外線は弱い放射線と考えても良いくらい危険です。オーストラリアでは紫外線は皮膚がんの原因の一つとしてその防護(特に子供のに対して)を義務付けています。長袖のシャツ、ツバ広帽子、サングラス、日焼け防止クリームを勧めています。世界中どこでも紫外線の害はありますが、オゾン層の減少、湿度が低く、空中のゴミが少ないなど、その土地に固有の特性があります。

いままでは、日焼けは健康のシンボルというような誤解がありました。ビタミンDの体内生成など、適度に日光をあびることによる益や、日干しによる消毒や干物の生産など利用の価値があります。しかし日焼け=紫外線による皮膚のヤケドであり、シミ、シワ、ソバカスなど、皮膚の色素沈着の主な原因とみなされるようになりました。白内障の悪化の原因になりうるともいわれます。

紫外線の被曝について誤った「常識」がありました。いくつかの実例を挙げて正しい事実をお知らせします。

  1. 曇った日でも晴天時の80%ほどの紫外線の強さである。
  2. 水辺では紫外線が増える。
  3. 冬でも、雪山では2倍の被曝になる。
  4. 日焼け止めを過信しない。防止効果はあるが、わざわざ被曝しない。
  5. 暑さを感じるのは赤外線によるもので、暑さ、寒さは被曝に関係無い。

環境省 2008年6月刊行の「紫外線環境保険マニュアル」を参照してください。参考に紫外線と皮膚について調べて見ました。紫外線は波長が長い方からUVA(UV=ultra violet 紫色の光線に近い、波長315-400nm)、UVB (280-315nm)、UVC (200-280nm)に区分されます。

人体に対する影響は紫外線の波長によって異なります。波長の長いUVAは皮膚の深くまで入り、エラスチン(皮膚の柔軟性)とコラーゲン(みずみずしさ)を損ないます。波長がやや短いUVBは強力で、被曝するとメラノサイトからメラニンを出させて細胞を守ろうとします。赤い日焼けから色黒になるのはこのせいです。シミやソバカスが残ります。しかし繰り返しUVBを被曝すると細胞が傷つき、免疫が壊れて皮膚がんの原因となります。

ホクロと間違いやすい皮膚がんは「基底細胞がん」、「有棘(ゆうきょく)細胞がん」、「メラノーマ(悪性黒色腫)」などがあります。手のひら、足の裏、顔面ほか体表面のホクロのような異変が発生したら、すぐに皮膚科で受診してください。

通常のシミであればレーザー治療やレチノイン酸配合クリームによる治療が考えられます。レーザー照射による治療は、シミが一気に消えるのではなく、かさぶたの状態が数ヶ月つづくこともあり、WEB調査では満足度50%と判定しました。レーザー治療に踏み切る前にやや緩い、より安全なレチノイン酸配合クリームによる治療をすすめます。美容整形ではレーザー治療をすすめがちですが、施術後の外見、痛みなど十分に医師と相談して、納得行く方法で「シミとり」を試みるよう、勧めます。

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